あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 磔の聖者




マルク、アドに続いて更にフォウスまでもが消えていきました。
「どうだい?今の気分は?君が信じてきた仲間が一人一人消えていく気分は!
 カービィ君♪アハハハハハッ♪」
エリウェーラの高笑いが響きます。
カービィはぎゅっと拳を握りました。
「さて…次は誰をいたぶってやろうかな……?」
エリウェーラは髪をまたかきあげます。
その時、黒い影がエリウェーラの背後から襲い掛かりました。
「デヴィル・シンドロォーム!」
アルゴルの大鎌の刃がエリウェーラに向かって振り下ろされます。
「おや…立候補かい……?」
鎌の刃の進撃はエリウェーラの人差し指と中指だけで止められました。
そしてまた、いつもの邪悪な笑い方をします。
「そう。確か二年前も闘ったよね。もっとも、君の攻撃は一つも届かなかったけど。」
「……二年前の過ちを…二度と繰り返したくない!仲間をこれ以上殺されてたまるかぁぁーっ!」
アルゴルの鎌に力が込められます。エリウェーラは一歩後ずさりします。
「ほぉーぉ。なかなか強くなったよ。アルゴル君。でも……。」
エリウェーラはもう片方の手を後に大きく引き、拳を握りました。
「でも、まだまだ僕を倒すには『力不足』だよっ!」
アルゴルの腹に強烈なパンチがヒットします。
アルゴルはそのまま飛ばされて瓦礫の山に直撃しました。
「ア…アルゴルっ!」
メタナイトが瓦礫の山へ駆け出していきます。
エリウェーラはカービィへ向き直りました。
「カービィ君、そこで見てるんだよ。君の仲間が死んでいくのを。」
カービィはあまりのショックに身体が少しも動けない状態になっていました。

その時、エリウェーラの視界は一瞬途切れました。
「なっ!?何だよ!?」
エリウェーラの周りの土が塊になって宙に浮いています。
それが凄まじいスピードで一斉にぶつかってくるのです。
「――黒方陣!!!!」
シルトです。
フォウスと闘った時よりも、二倍以上の魔力を注ぎ込んでいます。
「私も闘わないわけにはいかないっ!」
ずんっ
普通の大きさの塊より、一回り、いや二回り大きいくらいのものも発動します。
「おぉ。なかなか凄い魔力じゃないか。シルト君。」
エリウェーラは甘んじて全て攻撃を受けています。
全てモロに当たっているようですが、その顔は微笑んでいます。怖いくらい。
「でもねぇ…所詮君達の魔力じゃぁね………。」
あの右手を突き出しました。
「場違いなのよっ♪」
黄色い光が銛になって土のゲートをくぐりぬけました。
それはシルトに向かって一直線に。光の筋が射します。
「シルトさん!!!!」
シルトの胸に光の銛は刺さります。

「さて……二年前のあの日…その日もこんな感じだったよね♪」
シルトはわけのわからない力で上へとひっぱられます。
そして宙に浮かされる形となりました。
「あ…あぁ……!」
「そして…こうだ!」
更にエリウェーラの右手に光が迸り、二つの槍が発されました。
それは十字に組み合わさり、宙に浮くシルトの後へ。
「アハハハハ♪良いよ良いよ!ほんとに聖者みたいだよ!シルト君!」
シルトは痛みにもがいています。――黒方陣を使うどころではありません。
「あ…シルトさん……シルトさんが…!」
カービィは必死に動こうとしますが、恐怖で足が動きません。
いえ、その場で動けないのはエリウェーラの術のせいでもあります。

「エ…エリウェーラ……!貴様ぁ!やめろぉぉぉーっ!」
大地を蹴ってエリウェーラに斬りかかったのはアルゴル。エリウェーラはワケも無く避けます。
「死神か…まだ動けたんだね。アルゴル君。」
「貴様は…やはり倒さねばならなかった…。二年前の清算として!」
更にアルゴルは刃を向けます。エリウェーラは今度は左手を前に突き出します。
「アルゴル!お前!」
メタナイトの言葉も、アルゴルには届きません。
アルゴルの闘っているのは、きっと『二年前』なのでしょう。
「うおおおぉぉぉ!貴様がぁぁぁーっ!」
アルゴルは鎌の刃に魔力で後押しをして、それを放ちます。

「ヘヴン・ジェノサイドォォーッ!」
力だけでは無く、魔力だけでは無く、思いを込めての一撃。
同時にエリウェーラの左手から光が迸り、エリウェーラの全身を包み込む楯と化しました。
力と力の衝突。凄まじいエネルギー波で周りは目を開けていられません。
肌にピリピリと力の巨大さを感じていました。

「俺は過去の清算と…未来を切り開く!仲間達と!シルトと!ティアと未来を勝ち取るんだぁ!」

アルゴルの魔力は更に上がります。鎌を持つ手も力が入ります。
エリウェーラはアルゴルの言葉を微笑んで受けています。

「あぁ…ティアちゃんかぁ…君の妹。あの子はもう居ないよ♪死んだから。」

「なっ!?」

「アハハハ♪僕が君達との約束を守るとでも考えていたのかい?つくづく馬鹿だねぇ♪
 ティアちゃんは君達をゼロ君のことに送り届けた後、殺したよ♪磔にして♪」

「ティ…ティアを…殺したのか!?ティアは……死んだのか!?」

エリウェーラはアルゴルの問いには答えず、微笑み、続けます。
「それで……血まみれになって最期にあの子が言った言葉、何だと思う?」


――お兄ちゃん……負けないで…


「う…うあぁぁぁぁ!きっ…貴様ぁぁぁーっ!!!!」
「アーッハッハッハッハ!笑い話だよねぇ!アルゴル君!それなのに今こうして君は!」
突如、エリウェーラの魔力が膨れ上がります。
「死のうとしているっ!」
エリウェーラの右手に光が集まり、そのエネルギーは一直線に放たれます。
カービィ達が「あっ」と声をあげる間もなく、アルゴルは赤い筋を発しながら転がっていました。

「大丈夫だよ…アルゴル君。すぐに逢えるから……。」
手を十字にぶんと振ると、光の十字架ができあがります。
「兄妹そろって……ね♪」
宙に浮かされたアルゴルはそのまま剣で十字架に固定されました。
「ア…アルゴルさん!」
アルゴルの横にはシルトが磔になっています。
「皮肉なもんだね。二年前の清算と言ってみても、結局君達は何にも変えられない。
 二年前と、全く同じ光景じゃないか!」
エリウェーラの笑い声が乾いた大地を震わせます。
「さて仕上げだよ。」
両手の掌に光が宿ります。

「君達は…この僕に利用されるだけの…可哀想な人間だったね…。
でも、それ故に…もうこの場所に、仲間達にも未練は無いでしょう?」
エリウェーラは掌を二人に向けました。 
「ねぇ…磔の…聖者さん達♪」

ずっ…
放たれた槍に心臓を貫かれて、静かに二人は息をひきとりました。


「さて…残るは……メタナイト君達だね。」
エリウェーラは彼等の屍に合掌し、そして振り返りました。
アルゴルとシルトの血を仮面に浴びて、メタナイトは静かに剣を構えていました。
「メタナイト君。傷は大丈夫なのかい?」
メタナイトは無言で駆け出します。エリウェーラに向かって。
「メタナイツッ!」
その時、今まで気絶していた、否、気絶したふりをしていたメタナイツ達が一斉に跳ね起きます。
「うおぉぉぉっ!」
「な…何っ!?」
凄まじいスピードで全方向からのアタックを試みたのでした。
しかし…最初から結果は見えていたのです。それでも、こうするしかありませんでした。

「あぁ…一斉に来てもらえると、手間が省けてちょうどいいね。」
エリウェーラに刃をたてて、メタナイト達は最大限の力を出します。
そこに、微笑んだままのエリウェーラの、光を溜めた右手が放たれました。
「君達も皆の場所に逝きなさい♪」
メタナイト達は切り裂かれ、引き千切られ、地に伏せ、二度と起き上がりませんでした。
血が飛び散り、それはカービィにもかかりました。

ただ、呆然とするだけのカービィにエリウェーラは笑いかけます。
「さて…フィナーレといこうか?カービィ君。」



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★用語解説★

ヘヴン・ジェノサイド・・・アルゴルの最終奥義。ヘルズ・インパクトを超す威力の技。
             原子崩壊どころか、原子まで消される。
ティア・・・エリウェーラによって殺されたアルゴルの妹。アルゴルの戦う理由だった人。
      その支えが無くなったアルゴルは、もはやどうにもできない。
息をひきとりました・・・アルゴルとシルトも。自分で書いててもつらいんだよっ!
メタナイト達・・・やはりエリウェーラの手で殺される。
         これで、カービィの仲間は誰もいなくなってしまった。
         そう、エリウェーラの中に居る、彼を除いては。

★第二十七幕のあとがきっ★
始まった時から考えていた展開だけど、実際に書くと、すごくつらいです。
こんな酷く書いていて何だ!って思うでしょうが、星影もつらいんですよぉ…。
ここまで我慢して読んでくれた人、もう少しだけ、お付き合いを。





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