あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 最期の煌き




「カービィさん…貴方は『サーキブル』という人物を信用し過ぎてしまったんですよ…。」
サーキブルの挙げた手には、赤いものがべったりと付いています。
「『サーキブル』は貴方の使用人として、親友として、大切な人として。
 貴方が『サーキブル』の本当の姿に気付くはずは、元よりありませんでしたね。」
サーキブルは邪悪な笑い方をしました。
「サッ…サー君……う…嘘だよね…?」
「嘘ではありませんよ…。カービィさん。」
カービィはよろよろとサーキブルに近寄ります。
「さ…サー君……はこんな事…しないよね……?嘘…でしょ?」
「嘘だと…思うのですか?これでも…なお。」
サーキブルは血にまみれた羽をおもむろに取り上げました。
「マルク……マルクさんっ!!!」
サーキブルは高笑いをします。
「マルクとか…言ったね。こいつは…良い抵抗してくれたよ…。
 カービィちゃん達が戻ってくるまで僕にはやられないとか言って……ね。
 でも……無駄だったなぁ♪」
サーキブルはマルクの羽をその場に落とします。
「死んだよ。」
サーキブルの足が羽を踏みつけました。
羽はぶちぶちと嫌な音を立てて引きちぎられていきました。

「き…貴様ぁーっ!」
メタナイツを率いてメタナイトがサーキブルへ斬りかかります。
サーキブルは避ける気配も無く、右手を上方へかざしました。
「あーもう……。」
掌から赤いエネルギーのスピアを出して、メタナイト達を打ち落とします。
「がぁぁっ!?」
メタナイト達は何メートルか後ろに飛ばされ、地に伏せました。
サーキブルはその様子を見てフッと笑いました。
「このマルクが死んで哀しんでるとこ、悪いんだけどね。もっと絶望的な事を教えてあげようか。」
サーキブルは今度はぼろぼろになった赤い帽子を取り出しました。
「この子はアドレーヌとかいったねぇ…。この子も…終わったよ♪」
そう言って、サーキブルは帽子を放り投げます。
赤い帽子はカービィの頭にぽすっと当り、そのまま滑って地面に落ちました。
「ア……アドちゃん…?」
「無駄、だったねぇ♪…カービィ君♪」
カービィは羽の破片と赤い帽子を震える手で包みます。
「あ……何で…何で……。」
カービィの瞳から大粒の涙がとめどなく流れ出します。

「哀しむ必要は…無いでしょ?だって…もうすぐまた逢えるから…。ね♪」
サーキブルはカービィの肩をぽんと叩き、邪悪な眼で笑いかけました。
「サー君…何でこんな事するんだよ……何で…?」
カービィの声は震えています。
「だって…今までずっと…一緒に…来たし…僕等は仲間で……サー君は…僕が苦しい時も…
 いっつも!助けてくれたじゃない!」
サーキブルはカービィから眼をそらします。

「そうだねぇ…カービィ君。君には状況をちゃーんと説明してあげようか?
 今までの計画の全部を。」
「計画だと?」
アルゴルがカービィよりも先に反応します。
「そうだよ。君達も、僕のことは良く知ってると思うよ♪」
瞬間、サーキブルの身体は黒い光に包まれます。
「見覚えが無いかなぁ?僕に。」
光が消えると同時、強い風が吹きました。鋼の様な銀色の髪が風になびいています。
細身の体に真っ白な衣装をまとっています。
「…おっ…お前は!!!!」
銀髪の美少年は微笑みます。それと対照的にアルゴルとシルトの表情は更に険しくなります。
「見覚え…あるでしょ?……磔の聖者さん達♪」
アルゴルは大鎌をぐっと握り締めます。
「……アルゴル、もしかしてあいつが二年前の…!」
メタナイトがアルゴル達の表情で察します。
「お久しぶりだねぇ♪どう?あれからは。ゼロさん達にちゃんと協力してあげたかい?」
「貴様!よくもぬけぬけとっ!」
「お前!何でここにいるんだ!」
声を張り上げるアルゴルとシルトを銀髪の少年は声高く笑います。
「アハハハハッ♪アルゴル君もシルト君も、変わらないねーぇ。」
髪をかきあげ、それからもう一度、カービィへ向き直りました。

「あぁ、教えるんだったね。この事件の全貌をね。」
カービィは銀髪の少年を涙目で見ます。
「まず……僕の名前から教えようか。僕はエリウェーラ。
僕は石版に封印されてた「邪王」なんだよね。何で石版に封印されてたかは言えないけど。
まぁ、それで石版から復活した時に、ちょうど運悪くいたのが、アルゴル君とシルト君。
僕は彼等の強さに目をかけて、ゼロの惑星侵略の計画に協力するように仕向けたんだ。」
アルゴルはキッと睨みます。
「そして…ポップスターをゼロが侵略する計画がまとまった時に、
 僕はある男にまた封印をかけられたんだ。その封印ってのはね、今度は石版封印じゃなくて。
 人体封印だったんだよ。
 要するに…僕は『サーキブル』というポップスターの住民の中に封印されたんだ。」
また、強い風が吹きます。羽の破片が風に吹かれて飛んでいきます。
「でも、これがまた封印が未完成だったんだよね。
だから、いつもはサーキブル本来の人格で、たまに戦闘の時に少しだけ僕の人格が戻ったりした。
それを何度か繰り返して、やっと封印が完全に解けた時が、
 カービィ君達がゼロの本拠地につっこむ時だったんだよ。」
「じゃあ……本当のサー君はどうなってるの……?」
「『サーキブル』君なら僕の代わりに、僕の中に封印されてるよ。
 まぁ、もう元に戻すことは不可能だけどね。
 ……それじゃあ話を続けようか?
 で、君達がゼロと戦ってる間に、僕は周りの敵達を全部壊してきた。
 そして君達より早く、ポップスターに着いた僕は、当初の目的を達成しようとしたんだよね。」
エリウェーラは二本指を立てて言います。
「ポップスターの生物の殺戮と破壊!」

そしてマルクの羽とアドの帽子を抱きかかえているカービィに向けて、眼を向けます。
「カービィ君、君をわざと生かしておいて、苦痛を味あわせることに僕は決めてたんだよ。
 だから、デデデ大王君だけ生かしておいて、事実を彼の口から言わせた。
 そして……まだまだお楽しみはこれからなんだよねぇ♪」
エリウェーラの右手は標準を倒れているメタナイトに合わせます。
「…!な……何をする気なの!?」
「…………パーティさ♪」
エリウェーラの右手の掌が、今度は緑色に輝きます。
そして…………

ズドオオオオオッ!

青いエネルギーの濁流が、技を放とうとしたエリウェーラに炸裂します。
「君は…君は……許さない!」
エリウェーラは濁流の中で、また髪をかきあげました。
「ふーん…この攻撃は……フォウス君だね?」
「許さない!皆を傷つけて…全部君の計画だったなんて!」
エネルギーの濁流は止まります。しかし、攻撃は続きます。
「重き翠の力に天戒を受けよ!四神光臨!」
その大槌を今度は直接相手にぶつけました。
「玄武!!!!」
エリウェーラはよろめきます。そこにフォウスは拳を振り上げます。
「白き猛虎の牙をその身に!天戒を授け!四神光臨!」

「――白虎!!!!」
白いエネルギーをまとった拳が、エリウェーラの顔面に炸裂します。
エリウェーラはニ、三歩後ずさりしました。
「紅き翼の焔にて…浄化の力を天戒として!四神光臨!」

「――朱雀!!!!」
炎の鳥が現れてその翼でエリウェーラを焼きます。

「――やめろ!フォウス!貴様が戦って勝てる相手じゃない!」
アルゴルの声が響きます。
「―でも!皆がこの人のせいで傷ついている!そんなのを……ほっとけません!」
「フォウス君!」
カービィの声を背に、フォウスはまた攻撃を再開しようとします。が、

「こんな…威力かい?」
銀髪をなびかせて、エリウェーラは笑っていました。
そして、フォウスの腹部にはエリウェーラの右手の掌からの大剣がぶっすりと深く、
突き刺さっていました。
「あ……ぐぅぅっ!?」
「さて……結局殺す順番が変わっただけの結果だったね。無駄だったね♪君も。」
致命傷を受けたフォウスは、もう助かるはずがありませんでした。

「……青き…龍よ…白き……虎よ……紅き…翼よ…重き……力よ…。」
最後の力で、フォウスは何かを唱え始めました。
「なっ…何だ!?」

――星々の煌きは遠く 四つの星は今、交わらん
――輝きよ 星よ
――我に力と安らぎを 永遠なるものを
――天戒を与えるべく

「四神……光臨…。」

フォウスは最期にカービィ達に笑みを浮かべていきました。
「煌乱!!!!」

青・白・赤・緑。何色ともつかない光が、フォウスの体から発されました。
そして、そのエネルギーはエリウェーラに全てぶつかりました。
そして、光の中、フォウスは消えていきました。
まるで、自分の生きる希望全てをぶつけたかの様なものでした。
彼を呼ぶ声ももう届きません。
煌きは長く続き、やがて儚く消えていきました。

そして――
「………つくづく…無意味だったよ。君の最期も。」
それでもエリウェーラは立って、笑っていました。



NEXT STORY・・・磔の聖者



★用語解説★

マルクの羽・・・マルクファンさん、まずはごめんなさい。
        星影はなんか、凄く黒い話を書いています。
アドの帽子・・・次はアドレーヌファンさん、ごめんなさい。
        星影は、やっぱり頭が狂っているようです。カービィ小説じゃないな。もう。
エリウェーラ・・・ティッシュみたいな名前。サーキブルの中に封印されていた「邪王」。
         この全ての計画の張本人。アルゴル達をも陥れた者。
         「邪王」は創世前神の一つ、虚神ロクスの生み出した邪悪な生命体。
         馴れ馴れしい口調の殺人鬼。
白虎・・・四神光臨の一つ。両手のナックルに神気を込めて、最強の一撃を放つ。
煌乱・・・四神光臨奥義。その命とひきかえに、全ての神能力を開放し、煌きにして放つ。
     威力は惑星が粉々になる程。でもエリウェーラには効かない。

★第二十六幕のあとがきっ★
重ねて、マルクファンさん、アドファンさん、フォウスを気に入ってくれた人、すみません。
これがカービィ世界観ぶちこわしの究極。星影は何か勘違いをしています。
頭にきたら、苦情を星影まで。受けますから。(泣)





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