あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 そして世界は絶望へ




「ちょ…ちょっと…待ってよ…。何…?何なのこれ!?」
もう二度と動くことの無い街の風景です。風もありませんでした。
「せっかく…ゼロを倒したのに……何なの…これ!?」
カービィはその場に手をついてぶるぶる震えています。
「……星が…。」
「……滅んでる………?」
辺りを沈黙が支配します。黒い霧がかかっていた頃の方が、まだ明るかったでしょう。
「……とにかく…下に降りてみないか…?…考えるのはそれからでも遅くない…。」
メタナイトの提案で全員、下に降りることになりました。

近づいてみると、瓦礫の山と化した建物、燃え尽きたような灰色の地面。そして血。
一体何があったのか分かりませんでしたが、とにかく吐気がするくらい酷いありさまでした。
「……何よ…何が、何があったのよ!」
アドが悲痛に叫びます。皆、下を向いてしまいました。
「何が…?ゼロ達がやったに決まってるじゃんか!」
カービィの答えもつい荒々しい返事になってしまいます。
「…いや、それは無い。俺達の目的は闇エネルギーの採取だったからな…。
 ゼロはこんな闇エネルギーさえ無くすような馬鹿な真似はしない。
 俺の耳にも破壊活動を進めているなんて情報は入ってきていなかったからな……。」
元・幹部、アルゴルは言い切ります。ゼロの仕業では無いと。
カービィは涙で濡れた瞳をアルゴルに向けます。
「じゃあ!何があったっていうのさ!!!」
アルゴルは無言で首を横に振りました。
「メタナイツ…!近辺に生存者がいないか探して来い!」
「は…はっ!」
メタナイトも頭を抱えています。
(俺達がいない間に……何かが…。)
マルクは羽で空へ上がります。
「………ダメなのサ…。見渡す限り、全部灰色なのサ。」
フォウスも相当、辛い表情をしています。
「……ダメで元々…。メタナイトさん、この戦艦で残っている街を探してみませんか?」
アポカリプスを指差します。

「……いや…ここは慎重に行動するべきだ。」
野生の勘とでも言うべきでしょうか、メタナイトはその勘を口に出します。
「……誰かがやった可能性があるからな。」
「なっ!?」
メタナイト以外、全員、ぎょっとします。
「こ…こんな事できる人…だ…誰がいる?」
シルトは青ざめて言葉を発します。
「カービィ…最後にゼロが言ってたこと…覚えているか?」
「………っ!ま…まさかあれ…本当…………!?」
その時、大急ぎでメタナイツが駆け寄ってきました。
「メタナイト様っ!生存者が見つかりましたっ!」
「それに…!それに、HRで出たサーキブルさんが見つかりましたっ!」
 生存者は数十人、固まって洞窟の奥に隠れていました。
そこに、見慣れたサーキブルの姿も発見したのでした。
「カービィさん達!!全員、無事だったんですね!」
「サー君こそ!無事だったんだね!」
サーキブルはカービィに笑顔をつくってみせます。
「えぇ、あっちはなんとかなりましたよ。でも……この星の状態は…。」
「…うん…。サーキブル君、何がどうしたのか、情報とか無い?」
皆、張り詰めた表情になります。
そのうち、生存者の一人が話し始めました。
「わ…私達、ヨーグルトヤードの街から逃げてきたんです。」
「なにっ!?そんな遠い所までこんな状態なのか!?」
「はい…。でも、私達「逃げろ!」ってただ走らされて、状況全く分からないんです。」
「そうですかぁ…。」
はぁっと溜息が漏れます。
「…カービィさんも誰がやったか分からないんですか?」
サーキブルがカービィに聞きます。
カービィは首を縦に振って、その後俯いたままでいました。
「……そうですか…八方塞がり…ですね。」
「いや、そんなこともない。」
メタナイトの言葉に皆、はっと振り向きます。
「最期のゼロの言葉…。「カービィ、本当に恐ろしいのは貴様の一番近くに…。」だったか。
 それで、ある程度予測できる。」
「予測?一番近く?どういうことですか、メタナイトさん?」
メタナイトは一息大きくついて、答えます。
「この事態の張本人がこのポップスターに居たということだ。」
全員、一瞬氷のように固まります。
「あくまで仮説だが…それしか頼るすべもあるまい…。その張本人が見つかったら、
 この星を元に戻すことも……。」
「可能かも知れないってことですか!?」
メタナイトはこくりと頷きます。
「じゃ…じゃあ早くソイツを探そうなのサ!」
「……あっ!それじゃ戦艦の用意、僕がしてきますね。」
フォウスは戦艦の方へ走っていきます。それにメタナイツも続いていきました。
それにマルクとアドも続こうとします。
「待て!マルク!アドレーヌ!」
その時、二人はメタナイトに呼び止められます。
「何なのサ…?」 「何よ……?」
「…マルク、アドレーヌ、お前等はこの洞窟で、サーキブルと一緒に
 この避難者達を見ててやってくれないか?」
マルクとアドは驚きます。
「えっ?何でなのサ!?僕達もソイツを探すのに協力するのサ!」
「いや……、もしこの洞窟の近くにそいつが潜んでいたり、思わぬ敵が現れるかもしれない。
 そんな時、誰かが残っていてくれないと困るだろ……?」
アド達はまだ不満そうです。
「でも……。」
「アドちゃん、僕達は大丈夫だから、心配しないでここを見ててよ。」
カービィも説得に加わります。
結局、三人は洞窟に残ることになりました。
「じゃあ、サー君またね。」
「えぇ、カービィさん、頑張って下さいね!」

「さて…カービィ、心当たりはあるか…?」
メタナイトがカービィを艦長室に呼び寄せています。
「さぁ…良く分からないけど、僕と繋がりが深いっていったら、やっぱりデデデ大王だと
 思うんだよね…。」
「デデデだと…?あいつがこんなことを出来るのか?」
メタナイトはカービィの答えに不服そうです。
「いや…分からないけど、もしかして、また操られているかもしれないし…。」
「……あては無いからな…。しょうがない…デデデ城へ行ってみるぞ。」
アポカリプスはデデデ城へ向けて全速力で発進していきました。

「あっちゃぁ……違ったかぁ…。」
あのデデデ城でさえ、ボロボロになっていました。ただ、なんとか城の形は留めています。
「デデデ大王、無事なのかなぁ…。」
「さぁ…人が居るのかどうかさえ分からんな。」
アポカリプスはそのまま城の前に着陸しました。
カービィ達は弾丸の様にアポカリプスを降り、城の中へ突入します。

「デデデーっ!いるのかデデデーっ!」
カービィの声が響くと、そこに積み上げられてあった瓦礫の山が僅かに反応します。
「デデデっ!大丈夫!?」
カービィは駆け寄ってデデデを揺さぶります。
「カ…カービィか…!…良く…来てくれた…!」
デデデ大王は声で良きライバルの姿を認めます。
「デデデっ!?誰にやられたのか、分からない?」
助けられたデデデはその場に座らせられました。
「いや……分かるぞ……。」
「えっ!?」
全員がデデデの思いがけない発言に仰天します。
「あの野郎…ワシを寸前まで追い詰めて「お前だけは生かしておいてやる」など言いおった…。」
「えっ!?」
「ただのザコキャラだと思った……油断したわい…。」
「だ…誰なんです!?デデデさん!?」
デデデは大きく溜息をして間を置きます。
一行は息をのんでデデデの発言に注目しました。

「忘れもせん…あいつは……………。」


―――――しまった―!
その考えしか、デデデ城の時からメタナイトの脳裏にはありませんでした。
今はデデデ城を後にして、張本人の場所まで全速力でアポカリプスを動かしている所です。
速さが限界を超えて、オーバーヒートを起こしています。
しかし、そんな事は問題ではありませんでした。
カービィも同じく…いや、もっと辛い気持ちをカービィは味わっているに違いありませんでした。

―――――無事でいてくれっ!
―――――間違いであってくれっ!

……そして、彼等はアポカリプスを降りました。


「……あれ?カービィさん達、随分と早いですね?」
サーキブルは出迎えます。
「…サー君………。」
「どうしたんですか…?張本人は見つからなかったんですか?」
「………っ!」
カービィは声が出なくなってしまいました。

「……サーキブル…もう全て分かった…。」
メタナイトの言葉は冷徹に響きます。
「何のことでしょう?……それより皆さん、こんな早くていいんですか?」
サーキブルはメタナイトに微笑むと、自分の手をすっと上に挙げます。


「カービィさん。まだ……掃除も済んでいないんですから。ね?」

――本当ニ恐ロシイノハ…カービィ、貴様ノ一番近くニ居ルノダ……
   貴様ガ一番、信頼ヲ置イタ者…『サーキブル』ヨ………

………絶望は現実になりました。



NEXT STORY・・・最期の煌き



★用語解説★

星が滅んでる・・・この事態は全て彼の仕業。
サーキブル・・・HRで出て無事だった。あの包囲網を全滅させた。
        そして一番の原因。
デデデ大王・・・プププランドの大王様。根は悪い人じゃないけれども、わがまましほうだい。
        だからいっつもカービィにこらしめられる。でも憎めない人。
掃除も済んでない・・・それが何を意味するのか。何の掃除だろうか。

★第二十五幕のあとがきっ★
凄く暗い話。一番信じていた友、サーキブルの裏切り。
クライマックスへと、物語は突っ走る。
書いてると、すごく体力を消耗する。ホントに。





Back Top Next