あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 一番近くに




ゼロの体も闇の空間と同時に、砕けて砂になっていきます。
「ゼロ…君の言った通り、僕達一人一人は弱いかも知れないけど、決して皆の繋がりは
 弱いものなんかじゃないんだよ。」
カービィは拳を引き抜いて、仲間達の場所へ戻っていきました。
その時、もう半分以上が砕けているゼロの高笑いが響きます。
「カ…カービィ……まだ…そんな戯言を…。貴様…達だってそうだろう?
 その力は……ギャラクティック・ノヴァの能力の恩恵だろう……?」
アドがその質問に答えます。
「おあいにくさま。私達はノヴァにお願いなんてしていないわよ。」
ゼロはしゃがれた声で聞き返します。
「な…何ぃっ……!?願い事を…していないだと!?」
「そう。カービィちゃんの提案でネ。『力の本当の意味って、こんなことに頼るものじゃない』
 とかなんとか言ってサ、結局は僕達、星巡り損だったのサ。」
そうです。ギャラクティック・ノヴァの時、カービィはいきなり願い事パス!とか言って、
周りを驚かしたのでした。

「お前の言葉で言えば…愚かだぞ。ゼロ。」
メタナイトがゼロを罵ります。
「…ふっ……言っているが…良い。き…貴様等もすぐに…私と同じ運命を辿るのだ……。」
もう体の三分の一は砂と化したゼロは、気力だけで会話をしている状態です。
「…どういうことなんですか?」
フォウスが問います。
「…フ……貴様等は…確実に…死ぬぞ。全員…一人…残らずな……。
 この星に居る…全ての生命は……確実に…死ぬ!…死ぬぞ…!消えるぞ……!」
亡霊の様なゼロの言葉に、一瞬皆固まります。
「なっ…何をいいかげんなことを言うのサ。なんで僕達が死ななきゃいけないのサ!」
瀕死のゼロの声が、かぼそくなっていきます。
「……クク…私じゃない…本当に恐ろしいのは…な……私ではないぞ……。」
「……お前じゃない…?…何が言いたい?ゼロ。」
ゼロの身体はそうしている間にも崩れていきます。
「本当に……恐ろしいのは…。」
黒い空間に光が射しました。

「カービィ……貴様の一番近くに……………………………!」

ばきんっ!

ゼロの身体は最後に激しく崩れて、闇は明けていきました。
「一番…近くに?どういうことだろ?カー君分かる?」
「さぁ…?」
刹那、黒い雲が激しく揺れだします。
「……ここはもう長くない…!脱出するぞ!皆!」
メタナイトの声に全員、我にかえって走り出しました。

「うわわわわぁーっ!?メタナイト、速い!速い!転んじゃうよーっ!」
「黙れ!お前が遅いだけだろうが!転ばないようについてこい!」
「いや、メタナイトさん速いよ。ほんとに。私、追いつけないもん。」
「何っ!?アドレーヌもか!?」
「うぅん…普通に足の長さで考えると僕かアドさんが一番速いと思うんですけどねぇ…。
 ……メタナイトさん50Mのタイム、何秒ですか?」
「………5"01だ…。」
「Why!?何それ!?何でそんなに速いわけなのサ!?その足で!」
「黙れ!足のことは言うな!」
「あっ………気にしてたんですね。」
そうしている間、カービィは本当に転びます。
「あぁっ!ちょっ!メタナイト〜!転んじゃったよ!助けてぇ!死んじゃう!」
「五月蝿い!カービィ!お前はそこでゼロと運命共にしろ!」
「なんだよメタナイトー!『守るべきものを守る為』ってさっき言ってたじゃんか!」
「……お前は『守るべきもの』に入ってない。」
「………酷い。」
第三層まで一行は駆け出してきます。揺れはさっきよりも激しくなっています。
「おい!メタナイツ!急げ!発進の準備だ!」
メタナイツは一行に気付きます。
「あっ。メタナイト様!ご無事だったんですね!」
「……………ゼロを…倒されたのですか?」
「おお!メタナイト様!待ってましたぜ!俺、二十匹、ダークマターを仕留めましたぜ!」
「…アドレーヌさん、ご無事だったんダスね♪」
メイスはアドにお乗り換えの様です。もちろん、結果は言うまでもありませんが。
「やっほぉー。メタナイト元気だったー?」
アックス・ジャベリン・トライデント・メイス・ワドルディの順で出迎えます。
―――はっきり言ってゼロより厄介です。
「メタナイト様、貴方がいない間、私達心細く御座いました…しかし!その苦難を乗り越えてこそ
 私達メタナイツの誇りというものを認められます事と思い、私達、いかなる敵とも勇敢に……。」
「……………………………………………………メタナイト様……………………………………………
 ……………………………………………………………………………おめでとうございます。」
「メタナイト様にも俺の勇姿、見せたかったですぜぇー!まずダークマターの攻撃がどきゃん。
 そんで俺はそれをかわしてこう!んで、ダークマターが怯んだとこに、俺のトライデントが…。」
「アドレーヌさ〜ん♪ほら、輝く未来が貴女の眼に見えるダスよぉー。
 もし、このメイスと道を歩んでいくなら、幸せの光も見えることでしょうダスよぉ〜…。」
「ねぇねぇ、ゲームキューブでカービィシリーズって出るのぉ?
 教えて教えて、メタナイト様ぁー。」
―――ほら、厄介です。
「黙れ!早く艦を出さんか!」
「はぁーい……。」
メタナイトの一声で全て従うのは可愛いところです。
「た…大変だね。メタナイト。」
「分かるか…カービィ?」
メタナイト、こいつらを『守るべきもの』に認定するかどうか、再検討中です。

「おお。おかえり。」
笑顔のアルゴルがカービィ一行を迎えます。
「待て待て待て待て待て待て待て待てぇーっ!」
一行、艦に乗ると同時に全員いっきにつっこみます。
「何だ?何か不思議な点でもあるのか?」
「いや、不思議も何も、アルゴル!お前、何で俺の艦に乗り込んでいるんだ!?」
「いや、メタナイト。『アルゴル、俺はすでにお前の仲間だ』なんて言ってただろうが。」
後悔後先に立たず…。メタナイト、前言撤回したい気分が続いています。
「いや…な、お前なぁ。でも勝手に他人の戦艦の内装、変更するなよ…。」
「…いや、俺、『仲間』なんだろ?」
カービィ達はアルゴルのポスターが嫌というほど貼られている艦内を見渡します。
そして、一斉にメタナイトを見て、ポン、と同時に肩に手を置きました。
「ん……腹減ったからメタナイト、煎餅貰ってるぞ。」
アルゴルはボリボリと音をたてて煎餅をかじっています。
「お…お前!何故俺の秘密の菓子倉庫を知っている!?」
「いやぁ…『仲間』だからな。」
実際はアックスを脅迫して煎餅の在りかを見つけ出した様です。
「おっ…飲物欲しいな。おーい、オレンジジュース持って来い。」
「……はいはーい…。」
数十秒後、メイド姿に着せ替えられたシルトがジュースを運んできます。
一行、またつっこみをいれます。
「シルトさん!?何やってるんですか!?」
「いや…あのね、なんか気付いたらここに乗せられててね……。」
シルトはゼロを倒したせいか、性格が前に戻っています。
「シルトさん、怪我は大丈夫なんですか!?」
「うん…?ああ、まぁ、あのくらいだったらまだ魔力で何とかなるからね。」
シルトは気絶で済んだようです。まぁ、フォウスが手加減したのもありますが。
「あっ!いっけない!火止めてなかった!」
シルトはメイド服をパンパンとはたくと、キッチンの方へ走り去っていきました。
カービィ達はそれを遠い目で見送りました。
「…ふーん…シルトさんって家庭的な人なのねぇー。」
アドの言葉、棒読みで読んでください。

「メタナイト様!出発しますよ!」
カービィパーティは更に賑やかになって地上に向けて出航しました。

―――もちろん、これからの事は誰一人として予測していませんでした。

アポカリプスが地上に着地するとすぐに、黒い雲は消えていきます。
辺りを覆っていた真っ黒な霧もだんだんと晴れ、光を取り戻していきます。
「みんな、終わったんだねぇー。」
カービィ達は小高い丘に登って、もうすぐ見えるであろう街の活気に満ちた風景を上から
眺めようと待っているところです。
「ゼロも倒したしさ、アルゴルさん達も仲間になってくれたしさ、ほんとに良かったよねー。」
「うん。そうね。カー君もいつになく頑張ってくれたしねー。」
「星巡り損だったケドなのサ。」
「僕も、良かったですねぇ。ほんとに。」
「俺はもう御免だな……。」
「メタナイト様、今回より私共も、更に一心にメタナイト様の配下とさせていただく努力を…。」
「…………良かったですよね。」
「で、ですね、俺がこうずばっ!とこぅやったときの話で、そこでどっかーんとあれでもう。ね。」
「アドレーヌさーん。さっきから何で返事してくれないんダスかぁー?」
「ファミリーコンピュータ持ってる人って何人ぐらいいるかなぁー?」
「おい。メタナイト、羊羹貰うぞ。シルト!持って来い!」
「はいはーい……。」

たいへんな大人数です。
「あっ、霧が晴れてきた!もうすぐ街が見えてくるよ!」
カービィ達は下の風景に注目します。

「………えっ?な…何これ?」
そして霧の中、見えてきたのは完全な廃墟と化した世界の一部でした。



NEXT STORY・・・そして世界は絶望へ



★用語解説★

ノヴァに願い事・・・ノヴァの時、実はカービィは願い事をしていなかったのだ。
          なんでか?『力』を持つことで、本当に黒い雲を追っ払えるかと聞かれれば、
          自信を持ってイエスと答えられないからだよ。
          力を持つことで、失うものもまたあるのだ。
一番近く・・・その意味は後に分かる。惨劇とともに。ね。
50Mのタイム・・・メタナイト速すぎ。凄まじいスピード。……あの足で。
おかえり・・・アルゴルはシルトを連れて、一足先に脱出していた。
       んでもって、メタナイトの宇宙船に入っていた。なんてやつだ。
       アルゴルは、実は常識外れな人。真面目に見えて、全然違ったりする。
       シルトはアルゴルの言いなりになっちゃうような、気が弱い人だったりする。
メイド服・・・そんなんどこにあった。
廃墟と化した・・・あーぁ、やっぱりこれだけじゃあ終わらないのね。

★第二十四幕のあとがきっ★
ギャグ+シリアス。微妙に混ざり合っている。結構良い出来だと思うんだよね。
これからが正念場!カービィファンの人、本当にごめんなさい!な展開。
次の話を読むかどうか、思案しなさいな。





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