あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 プラネット




カービィは最深部への道を先程から走りつづけていました。
道を進むにつれて、走る感覚から雲の中を『泳ぐ』感覚に変わっていきます。
(ゼロのとこに…近づいてきたっ!)
道の奥の奥の方、ひときわ真っ黒な空間が浮かんでいます。
そこできっとゼロが待っているのでしょう。

「カービィ…貴様はいつも私の邪魔をする…。」
黒い空間までの途中で、耳の奥のほうに響く重い声がカービィに届きました。
「ゼロ!ゼロだね!その声!」
カービィは空間へ泳ぐスピードを最大限にします。
「この星をあきらめて…捨てればよかろうに……。」
「そんなことはできないって!」
「何故……貴様はいつも私にたてつく?」
「だって君が悪いことするからじゃないか!」
真面目な会話ですが、カービィの話の内容が薄そうなのは気のせいでしょうか。
「そして…カービィ、貴様の言う力とは…何なのだ?」
「力?力……そういえば力うどんの力って何の意味なのかなぁ。」
「カービィ…ふざけているのか…?」
「ねぇ、ゼロはどう思う?力うどんの力ってどんな意味なのか知らない?」
「うむ…力?餅が入っていることが力うどんの条件だから…餅じゃないのか…?」
「餅?やっぱ餅かなぁ。でもそしたらなんで餅が力なのかなぁ?」
「それは……って何を言わすのだ!」
カービィが居ると小説がどうしてもシリアスになりません。
「ともかく…貴様との闘いは宿命を感じるな…。」
カービィは黒い空間の中にずぶりと入っていきました。

「うひゃあ…真っ暗だぁ……。」
「カービィ…今回、私達がこのポップスターを襲ったのには…二つ、理由がある。」
真っ暗な空間にぼそりとゼロの声が聞こえます。
「えっ?二つ?」
「一つは……いつも通り、闇の心の採取…『ポップスターの乗っ取り』だ。」
カービィはどこにいるかも分からないゼロに問います。
「もう一つは?」
少し間をおいてゼロの声が聞こえました。
「もう一つは……。」
カービィは聞き耳をたてます。
「邪魔者の処分…。『貴様の処分』だ。」
真紅の眼が闇の空間に開きます。
「今回…ナイトメアやシルト、アルゴルを呼んだのも貴様を完全に消す為だった。」
カービィは身構えます。
「しかし…メタナイトを始め、貴様の仲間のせいで計画は完全に狂ってしまった…。
 だから、こうして今私が貴様の目の前にいるわけだが…。」
真紅の眼の周りに青白い紋章の様なものが浮かび上がってきました。
「それでも…貴様は終わりだ。」
「難しい話は意味が分かりにくいなぁ。簡単に話してよ。」
「簡単に…?そうだな……『貴様は私を倒せない』とでも言っておくか。」
黒い空間にいきなり、正反対の白色が現れました。

「行くぞ…カービィ。私自ら、貴様を葬ってくれる!」
「葬るって……何?」
ゼロの周りの紋章が、青い輝きを発しました。
刹那、ゼロの瞳と同色の丸い弾が数個、現れました。
「うわぁっ!?またこの攻撃!?」
カービィは何か、武器を構えました。
赤い弾の一つが、カービィに向かって飛来してきました。
「よしっ!タイミングばっちし!」
カービィは両手に握ったものを振り上げ、そして赤い弾に振り落としました。
かしんっ!
赤い弾が見事、打ち返されます。赤い弾のラインに虹が架かりました。
そしてそのままそれはゼロにぶつかって爆発を起こしました。
「カービィ…その武器は…何だ?」
ゼロは何事も無かったかの様に、話します。
「この武器?これはねぇ、最初に君達が来た時にダークマターをやっつけた武器なの。
 『虹のつるぎ』っていうんだけど、ご存知なーい?」
「知らない…な。」
カービィはつるぎを横に構えます。
「じゃ、その破壊力、とくとご覧あれっ!」
カービィは素早い動きでゼロに向かって近づいていきます。
そして、液体のような雲の漆黒の空間を光る剣を持ちながら上に登ります。
「えぇいっ!」
きらりと剣の切先が光ったと思うと、ゼロの上部に刃が光を帯びて直撃します。
「どぉだ!ゼロ!」
ゼロはその赤い眼を一瞬つむりましたが、今はカービィを見ています。
「ふむ……問題は無い。」
カービィとゼロの間の時間が止まります。
「では…今度はこっちの番だな……。」
ゼロの周りの紋章がまた、光を発しました。そして今度は先程よりも大きな赤色が浮きます。
そして、次の瞬間、闇をまとって落ちてきました。
「うひゃあっ!?こんな大きいの、剣でも打ち返せないよ!」
カービィは大きく避けます。また、ゼロの周りの紋章が光りました。
「えっ!?」
大きな赤い弾は放物線を描いてカービィの背後まで返っていました。
大きな爆発を起こして、カービィは吹っ飛ばされ、空間の一部に叩きつけられました。

「…他愛の無い……ものだな…。カービィ?」
カービィはやっと体を起こします。見た目以上、ダメージは大きいのです。
立とうとする瞬間、またカービィは倒れこみました。
「く…くそぉっ!」

「愚かだな…カービィ。」
カービィの様子を横目で見ながらゼロは話を始めました。
「カービィ、貴様等は愛や、情などぬかして、希望や未来を…信じつづける……。
 愚かだと、思わないか?」
「な、何だよ!いきなり!」
「『信じる』ことは自分達が弱いことを認めているも同然…そうだろう?
 何かを『信じ』なければ、自分の弱さに耐えられなくなってしまうから、
 ………だから貴様等は『信じる』のだろう?」
「そ、そんなことじゃな……。」
「貴様等は可哀想な種族だな…。」
ゼロは燃える様な色と対照的に瞳に冷たい光を溜めて言い放ちます。
「だが…カービィ、貴様は『信じる力』など言って、私達を幾度も倒している……。
 それは…何故なのだ?…貴様の背後に『信じる』以外に何がある?」
「そんなの……な…。」
「貴様は分かっているのだろう?そもそも、貴様はポップスターの者では無いはずだ。
 何故ポップスターに執着している?一体何がそこにあるのだ?」
ゼロは更に話を続けます。
「カービィ、貴様ほどの者なら、『信じる』ことがいかに無意味か分かっているのだろう?
 『信じれば裏切られる』、『誰も信じることなどできない』それが真実だと。」
「ゼロ……!」
「素直に言えばいいのだ…カービィ。『信じる』ことが無意味だと。」
「ゼロ!」
「他人など、道具に過ぎないと!『信じる』など空想上の薄っぺらなものだと!
 素直になれば…いいのだ!カービィ!」

「違うぞ!ゼロォ!」
カービィは今度こそ、立ちました。
「…背後も何も…僕には…『信じる』しか無いよ。ゼロ。」
カービィは虹の剣をしゃんと振りました。
「君は…全部勘違いしているよ…。『信じる』ことは、本当は力の為に使うものじゃないんだ。
 皆、皆が幸せだなぁって、思えるように使うんだ。」
「何…?」
「『信じる』ことを無くした人なんてのは、その時点でもう、人じゃなくなっちゃうんだ。
 だから…教えてあげるよ、ゼロ。」
カービィの背中は先程までと全く違う、勇ましさがありました。
「『信じる』ことの大切さをね!」



NEXT STORY・・・信じる!



★用語解説★

泳ぐ感覚・・・黒い雲の核は不思議な空間。闇のエナジーだらけだから、
       歩くことも、飛ぶことも出来ないのさ。
青白い紋章・・・本編ではそこまで書かなかったけども、ゼロの周りには青の紋章が
        土星のリングみたいに浮かんでいる。これがパワーの源っつーかなんつーか。
        サブタイトルの『プラネット』ってことなのだ。プラネット・ゼロ。
        もちろん、こんなんは星影のオリジナルなのよ。
丸い弾・・・ゼロがカービィ3とかでも使ってきた攻撃。星影の漫画ではゼロ・ブラッドとか命名。
      なんかすっごくテキトーだね。
虹のつるぎ・・・カービィ2より。虹の島々がダークマターに占領された時、
        カービィが使ってダークマターを討ち払った。ナイスな武器。

★第二十二幕のあとがきっ★
遂に最終決戦。キーワードは『信じる』ことなのだ。
本編のカービィの言葉が、星影が皆に言いたかったこと。
それを、それぞれに、それぞれの形をもって感じて欲しいのだ。(なんか偉そう…。)





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