あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 兄妹




―――闇の中に身を隠し、相手の背後より相対する二つのエネルギーの反作用を用い…
    斬ると同時に内側より、反作用の振動で原子崩壊を引き起こす…
    それが、ヘルズ・インパクト……

闇の門が開いて、漆黒の世界へと変わります。
「もう一度、これでやられてみるか!?」
アルゴルの言葉に、メタナイトはニヤリと不気味に笑いました。
「…来い!」

「アルゴル…お前に教えてやろう…。」
闇の中でメタナイトは何処かで息をひそめているアルゴルに話し掛けます。
「人は何の為に力を使うべきだと思う…?
 自分がのし上がる為―、違う。優越感を手にする為―、違う。
 人々の支配をする為―、違う。世の中を粛正する為―、違う!」

メタナイトは力の限り叫びます。

「人は、誰かを守る為に―!誇りを守る為に―!絆を守る為に力を使う!
 そして、誰かがいて強くなれる!何かがあって強くなれる!苦しみがあって強くなれる!
 俺でさえ―!独りでは生きることができなかった―!」

アルゴルはメタナイトを斬るべく、跳びました。

「何かを―!守る為に俺達は戦う!!!!」

「それが―!最期の言葉かメタナイト!!!!」

アルゴルの鎌が放たれました。

「人は―!そうやって進み続けるんだ!!!!」

かっと光が戻りました。
アルゴルの鎌は仮面を突き抜けてメタナイトを刺し貫いていました。
メタナイトの剣は死神の衣服を貫いてアルゴルを赤く染め上げていました。
ゆらっと揺らめき、二人は同時に倒れこみました。
――相打ち。

メタナイト達に暫く沈黙が続いた後、突然アルゴルが口を開きました。
「メタナイト……貴様は…弱い…。」
血を口に含みながら、アルゴルは一言一言喘ぎ、語りました。
「しかし…俺も……弱い…のだな。俺が弱いから…結局…守るのが…こんなに辛い。」
メタナイトも力を振り絞り、声を出します。
「アルゴル…もう一度…質問させてくれ…。お前は……何故俺を逃がした…?」
アルゴルはにいっと笑うつもりでしたが、顔を歪ませるだけにとどまりました。
「…俺に…似ていた…からだ。自分の力を…求めすぎて…仲間を…求めていなかっただろう?
 だから…判って欲しかった…。たとえ、俺が…そのせいで…死ぬことに…なっても。」
「何故そこまで…お前は俺に…?」
「俺も…守るべきものがある…。あいつ等が助かるなら…俺は何を無くしても構わない…。」
「何が…そこまでお前を縛っている…?」
「シルト…と、俺の妹だ…。」
「シルトと…妹…だと?」

アルゴルは充分すぎる程、間を置くと、ぽつりと昔語りを始めました。
「妹の名はティア…俺の非力さ故に妹は囚われた。
俺にもっと力があったならあいつはこんなことにならずに済んだ…。」
「聞かせて…くれるのか?」
アルゴルはこくりと頷くと話を続けました。
「俺達は二年前アクアリスに二人で住んでいた。両親が…いなかったから、
 ティアは俺にとってたった一人の家族だった。
 シルトはそんな俺達に本当に良く接してくれた。疑いようも無く、あいつは俺の親友だった。
 ただ…あの日を境に、俺達は真っ暗な道を進むことになった…のだ。
 …俺はその時、発掘された古代の石版の調査作業に駆り出されていた。」


―――二年前のある日…
「お兄ちゃん!お弁当忘れてるよ!」
金髪をなびかせて、白い服を着た少女が走っています。
「……悪いな。」
金髪の青年は少女から包みを受け取りました。
「お兄ちゃん、あんまり無理しないでね。」
少女はあどけない笑顔を青年に向けます。青年は「分かってるよ」とだけ言って、
仕事場へ戻ろうとしました。
「うわぁぁぁっ!?」
同僚の叫び声が、突然海岸に響きます。やがてそれは絶叫へと変化し、最後に途絶えました。
「…っ!?何だ!?何が起こった!?」
「仕事場の方から聞こえたみたいだけど…。」
そこまで会話すると、二人は一直線に石版の場所まで走りました。

「何だ…!?どうなってるんだ…!?」
そこには無残な同僚達の屍が積み重ねられていました。ティアは思わず口を抑えます。
石版の近くは特に血で赤く塗られて酷い状況になっています。
「こんな…酷い…。」
ティアはそのまま膝から地面につきました。
「誰かが…やったのか!?」
誰かがやったとしてもそれは人智を超えた、化物のようなものです。
それぐらい現場は酷い状況でした。
その時、屍の塔でかすかに動いた者がいました。
「――!生きていたかシルト!」
アルゴルはその瀕死の男に駆け寄りました。
「何があった!シルト!」
「あ…アルゴル…ティアちゃんも…。皆…皆……死んでしまったのか…っ?」
シルトは途切れ途切れに言います。シルトの言葉にアルゴルは小さく頷きました。
「お前が…生きていただけでも…。シルト…立てるか?」
「ア…アルゴル…まずい…お前達も…ここから離れないと…殺される…。」
ティアもアルゴルとシルトの傍に駆け寄ってきました。
「一体…何があったんだ?シルト?」
「化物が…石版から……。」

そこまで言いかけて、シルトは悲鳴をあげました。
「なっ!?」
シルトの胸を光で出来た槍の様なものが貫いています。
「シルト…とか言ったね?君はまだ利用させてもらうよ。」
その槍が宙に浮くと同時に、シルトの身体も宙に上げられました。
「シルト君。僕の計画に協力してくれたまえ。」
流れる様な銀髪の少年はアルゴルの方を向いてニヤリと凄みのある笑い方をしました。
「おや、君はアルゴル君だね。」
「……貴様っ!貴様かっ!?シルトを…放せ!」
男はアルゴルの言葉に耳も貸さず、右手に光を溜めました。

「さぁ、僕もあまり手荒なことはしたく無いんだ。計画に協力すると言ってくれ。」
シルトは苦しそうな表情で、首を横に振ります。
「もぅ…協力してくれよ♪」
ドスッ!
シルトの左胸に、光の槍は差し込まれました。
「ぐあぁぁぁぁ!?」
血がアルゴルの顔に降り注ぎます。そしてまた少年の右手に光が集まっていました。
「貴様!やめ…!」
「もう一本!」
今度はシルトの右腕に、光の槍が刺さりました。
「あぁぁぁあっ!」
シルトの叫び声が再度。
「貴様ぁ!やめろぉぉぉーっ!」
アルゴルは常備の大鎌を背中から取り出します。
一閃!

「死神かぁ…。」
少年は音も無く、目にも見えず、その時アルゴルの背後にいました。
「お兄ちゃん!」
刹那、光の矢が何十本も身体を突き抜けます。
「き……貴様ぁぁーっ!」
血が身体の至る場所から噴きだします。アルゴルは手を必死で伸ばします。
「アルゴル君…僕は君にも協力してほしいんだよ。ね?」
光の槍がアルゴルを十字に突き刺します。
「あっ…あぁ…きさ…ま…!」
十字は宙に浮き、シルトと並べて浮かべられました。
「あっははは!磔の聖者の様だよ!最高だ!」
「お兄ちゃ…!」
「さぁ、協力すると言ってくれ♪頼むよ♪」
アルゴルとシルトはやはり首を横に振ります。
「…貴様に……協力は…しないぞ!貴様なんかに……!」

少年はふっと溜息をついて、アルゴル達に背を向けました。
「しょうがないねぇ…。」
少年の眼が冷たく笑いました。
「じゃあ、ちょっと手荒な行動をしちゃおうかな♪」
少年の右手の掌は、ティアに向けられました。
「ティ…ア…っ!」
少年の右手より、再度、槍が放たれました。
「ああああああぁぁ!」
ティアの胸に光が貫きます。
「ティ…ア!」 「ティア…ちゃん…!」
二人の悲痛な叫びが重なりました。
「さて…。君達が協力するのなら、この子を助けてやらないことも無いよ♪」
少年はこちらに背に向けたまま、言い放ちます。
「き……貴様ぁ!!」
少年はにこりと微笑むと、手をパンパンと叩きます。
「さぁて君達、この子共々皆で死ぬか、僕に協力して皆で助かるか。」
そして最後に少年は言葉を無くした二人に向き直り、言い放ちました。
「答えは見えてるよね?僕に、協力するんだ。」


――その二年後の今。
「あの時は協力しなくては…ならなかった。」
メタナイトはアルゴルの言葉を受け取ります。
「少年はゼロに俺達を預けた。そして、ティアはあの少年が連れ去ってしまった。
 俺達が少しでも不審な動きをしたら、ティアを殺すと。人質として…だな。
 シルトは…ゼロに、別人格を埋め込まれ今の様になってしまった。
 それからは…お前が知っている通りだ。メタナイト。」
「アルゴル…。」
「誰かを守る為に力を使うこと、命を削ることが必要だと、俺が一番良く分かっている。」
そのアルゴルの言葉を背にメタナイトは突然、傷口を抑えて立ち上がりました。
「アルゴル……俺の力など、何も役に立たないかも知れない。」
アルゴルはメタナイトの顔を見つめました。
「だが……俺はもう…お前の『仲間』だということ…告げておく…。」
メタナイトはそれだけ言うと、最深部へ向けて、走り去っていきました。

――何かを守りつづける為に闘う。
――人は…そうやってそうやって進みつづけるんだ。
アルゴルは座ったまま、小さく笑っていました。



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★用語解説★

あえて解説することは無いはず。本編でアルゴルの過去を知ってくださいな。
そして銀髪の少年の存在も知っておくべし。

★第二十一幕のあとがきっ★
暗い話。カービィ小説でこんなんやるなって感じ。
これが星影の言ってたカービィの世界観ぶち壊しってやつかな。ホント、すみません。
でも、まだまだこの調子は続くんだよなぁ…。





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