あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 再戦




薄暗い黒い雲の道を、二人は走っていました。
「ずいぶん…進んだはずだな…。」
「中心部には…もうすぐ…かなぁ?」
この第一層、最終防衛層も敵の攻撃は皆無でした。
メタナイトは桔梗色の眼の男、アルゴルがいる事を、確信していました。
「…カービィ。あの男との戦いは、俺一人に任せてくれないか?」
「メタナイト…決着をつけに行くんだね…。」
自分に敗北を与えた男は、自分を逃がした。自分に強くなって帰って来いと、男は言った。
自分はそれの為にも、今までの道を切り開きつづけた。
「アルゴル…!」
メタナイトは遠くないうちに起こるであろう激闘に、胸を高ぶらさないわけにはいきませんでした。

メタナイト達は少し開けた場所に出ます。
その場所からは一つの道に繋がっています。中心部への道でしょう。
「出て来い!アルゴル!」
メタナイトが言うと、待っていたかの様に、アルゴルは姿を現しました。
「来たな…メタナイト…。」
全身黒の装束に、大鎌というアルゴルの眼は桔梗色に鈍く輝いています。
「待っていたぞ…。お前が力を得て、戻って来る事を…。」
音も無く、アルゴルは歩み寄ってきました。
「お前は…カービィとかいったな。ゼロ様が待っている。行くが良い……。」
カービィは一瞬メタナイトを見ると、そのまま中心部への道へ駆け出していきました。
メタナイトとアルゴルは、あの時同様、間を置いて対峙しました。

「ひとつ…お前に聞きたいことがある。」
メタナイトから喋りだしました。
「何だ…?」
「何故、俺を逃がした。」
アルゴルは表情を一つも変えずにメタナイトの問いに答えました。
「前も…言ったろう。愉しみの為だ。強い者と戦う快楽の為だ。」
「本当にそれだけか…?」
「………それだけだ。」
無表情で答えるアルゴルからは、何を考えているのか、メタナイトには分かりませんでした。
ただ、彼が本当に望んで自分と戦っているのか、それだけは疑問に思っていました。
「お前は…ゼロを心から慕っているのか?」
「……そんな事はどうでも良い事だろう。お前は、俺と決着をつけに来たんだろう?
 ならば…お喋りはこの辺で切り上げないか?」
アルゴルはその金髪をかきあげます。
「メタナイト……前回と同じく…お前から来な。受けてやるぜ。」
メタナイトは無言で剣を構えました。
自分の剣には絶対の自信を抱いていた。あの時も、負ける筈は無かった。
しかしアルゴルには勝てなかった。
「後悔…するなよ!」
今、全ての迷いを断ち切る為、謎を明らかにする為、メタナイトは剣を振ります。

横薙ぎ一閃!予測していたかの様に、狙った場所にはアルゴルの鎌があります。
弾く金属音に混じって、唸りをたてて進む白刃の音が響きます。
「相変わらず…!当たらないな!」
アルゴルの鎌がメタナイトのコンマ一秒程の隙を見定め、大振りに落ちてきます。
それを横に跳んでかわします。
「見えているな…確実に実力は上がっているな!メタナイト!」
メタナイトは剣を持たない左手で地面から後方へ跳び上がります。
そのまま空中でモーションをつけてアタックへ持ち込みました。
「鳳凰疾風撃!」
大地を這う猛風の如く、軽い衝撃波が発生する程のスピードがつきます。
それさえもアルゴルは紙一重ですが避けていました。
「貴様が技を披露してくれるとはな。ならこっちも一つ…。」
アルゴルは力を出す時、『お前』が『貴様』となります。
剣を地面から抜いたメタナイトの真上に向けて、アルゴルは鎌を思いっきり大振りに振ります。
「カース・グラビティ!」
メタナイトは『天に落ちる』感覚を体験します。わけの分からない力に引っ張られて、
メタナイトは無防備で宙に浮かされました。
「もらった!」
冷たい刃の感触が肌に触ります。間一髪で肩の防具で防いだ鎌の一撃が、手に触りました。
アルゴルが「ちっ」と舌打ちをすると、天に向かった重力の鎖は途端に消滅しました。
地につくと同時にメタナイトは右足を大きく踏み込みます。
「ちぃっ!」
メタナイトの剣がアルゴルの鎌と接触し、鎌は横に大きく弾かれます。
そこに回し蹴りの要領で、回転力を加えたメタナイトの第二撃が放たれます。
「イビル・マグナム!」
アルゴルは闇の弾を創り出し、襲い掛かるメタナイトを刹那の差で弾き飛ばします。
しかし、腰の辺りを刃が切り裂いていました。
「お互いに…消耗戦ってとこか…?」
メタナイトはアルゴルの言葉にニッと笑い返すと、息もつかぬまま突進します。
アルゴルはすっと鎌を右の腰に当て、身体を前に傾けます。アルゴルも前へ駆け出しました。
「デヴィル・シンドロォォーム!」
「炎龍砲閃!」
白刃と白刃がぶつかり合い、鍔迫り合いの様な格好に一瞬なります。
「ギャラクシー・ブレイク!」
「呪怨斬!」
お互いに、そこから一歩退いて、また一撃を加えようと試みます。
「デス・ワルツ!」
「氷縛葬斬!」
そこから更に連打戦を繰り広げます。二人の太刀筋は離れることなく、全て交差しています。
最後の一撃に火花が散って、二人は間合いを広げ、空中から着地しました。
「……くっ…なかなか腕を上げたじゃないか。」
アルゴルは鎌をぶんと一振りして、態勢を整えました。
「…流石に…入らないな…。」
同じく、メタナイトも剣を振り、態勢を整えました。
「貴様の力の根源はギャラクティック・ノヴァの力か?メタナイト。」
「それは…違うな…。」
二人はそれだけ会話を交わすと、また激しい打ち合いを始めました。

アルゴルの鎌が黒い風を震わせます。
「少し…お喋りでもするか…。」
メタナイトの剣の一撃、しかし空をきります。
「お喋りか。何か話すことがあるのか?」
「そうだな…お前が剣を取った理由でも、聞かせてもらおうか。」
「俺が剣を取った理由だと?」
アルゴルは一瞬間合いを広げ、勢いをつけて頭部を狙います。
「教えたくないか…?」
「いや…そんなことはない…聞きたいなら聞かせてやろう。」
メタナイトはアルゴルの鎌をさっと払います。
「俺は…ある時から、急に世の矛盾が目に付きだしたのだ。」
メタナイトは突きを繰り出します。
「俺が求めていたのはそんな世界ではない…。そんな世界ならいらない…。
 きっと俺は自分勝手に世の中を考えていたんだな。」
「それは……同感だ。メタナイト。」
アルゴルはさっと跳び上がります。
「世を粛正する為に、俺は力が必要だと思った。そして剣を手にした…。」
「それで?貴様が思うような世界に変えられたのか?」
「…俺が力を持ったところで何も世界は変わっていない。ただ、俺は満足できたが。」
メタナイトもアルゴルの方へ跳びます。
「それは何故だ。メタナイト。」
「世の中は俺が絶望する程、悪くなかったと悟ったよ。」
「悪くない…か。貴様をそう思わせたのは何だ?」
アルゴルは鎌を振り上げます。
「その過程で…俺が掴んだものは…確実なものではない。ただ、これだけは言える…。」
メタナイトはアルゴルの鎌を避けます。
「俺は自分のことばかり考える奴ばかりがいると、勝手に思っていた。それは…間違いだった。
 自分が傷ついてでも、他人を守ろうとするお人好しがこの世にはいた。」
「それがお前の仲間…か?」
「…そうだ。アックス…メイス…トライデント…ジャベリン…ワドルディ…サーキブル…
 フォウス…アドレーヌ…マルク……そして、カービィ!」
アルゴルはふっと着地して、横薙ぎを放ちます。
「あいつら一人一人の力は、大したことがないだろう。しかし、何かを守ろうとする時の、
 あいつらの気迫は凄まじかった。」
「それで…?お前は結局何を見つけた…?」
「俺の剣を振る理由だ。」
アルゴルの横薙ぎをかわさず、メタナイトはつっこみます。
「今の俺の剣を握る意味は…あいつらと一緒だよ。」
メタナイトは両手で剣を握り締めます。
「何かを…守る為だ!!!」
アルゴルの鎌はメタナイトを切り裂きます。同じく、メタナイトの剣先はアルゴルの肩を突きます。
「…っ!貴様は…馬鹿だぞ!」
「何故だ…アルゴル?」
「貴様は…馬鹿だ!」

――俺も…馬鹿だからだ…!
血が地面に数滴、落ちます。
アルゴルは鎌をくるりと回転させて、右手でしっかり持ち直しました。
「こんどこそ…墓場に送ってやるよ…。」

―――ヘルズ・インパクトかっ!
メタナイトはついに決着の瞬間が来たことを察しました。



NEXT STORY・・・兄妹



★用語解説★
全身黒の装束・・・格式ある冥族の正装。死神の正装である。
         怖いわ。
カース・グラビティ・・・重力波を発生させて、重力を操ったりする。
            この場合、メタナイトの頭上に重力核を発生させた。
イビル・マグナム・・・闇の気を半具現化して紫色の弾を発射する。
デヴィル・シンドローム・・・横薙ぎに波動をプラスした攻撃を放つ。
炎龍砲閃・・・メタナイトの技。もちろん、星影のオリジナルなのでどこ見ても無い。
       突進から派生する、炎を纏った攻撃。中距離がベスト。
ギャラクシー・ブレイク・・・小惑星破壊のパワーも出せる脅威の技。
              しかし、その力を出せばその先には死が待っている。
呪怨斬・・・古代王朝の皇族の呪いが今でも宿る。怨恨を込めた恐ろしき一撃。
デス・ワルツ・・・踊るようなステップで連続攻撃を仕掛ける。
         冥族はこれでダンスパーティを行うらしい。……嘘です。
氷縛葬斬・・・氷結力で敵を葬る。その名の通りの効力の技。
       単発では全く効き目がないが、何発もいれれば効果は凄まじい。
剣を取った理由・・・メタナイトの理由。人それぞれに意味は違う。
貴様は馬鹿だ・・・直接的にはメタナイトに、間接的には自分に言ったこの言葉。
         彼の心の傷とか、そういうことに関係してたりする。

★第二十幕のあとがきっ★
たぶん流れ星の中で、一番バトルらしいバトル。
十回近く書き直しをしたのは、やっぱりメタナイトさんが大好きだから。
この作品が終わっても、やっぱりメタナイトさんは別の作品で、また出すんだろうな。





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