あの流れ星に
たったひとつの
願いをかける

ここにあるのは優しい光




流れ星






KIRBY STORY  〜流れ星〜 信じるべき夢なら




流星の如く、飛来してくる星型の弾を大きな渦巻きで吸い込みます。
「どうヨ?僕のプルート・ホールにはその弾も全く無力じゃないのサ?」
マルクは翼で上空に飛びます。それをウィザードが追いかけます。
「無力ハお前ダヨ…。ワタシノ邪魔ヲスルからお前ハ死ぬノダ…。」
マルクはぶんぶんと首を横に振った後、ニッと笑いかけます。
「やだネ。死にたくないのサ♪」
マルクは呪文の詠唱を始めます。と、同時にウィザードも詠唱を始めます。
「大いなる海原は我らの母なり…光に満ちたる三角に全ての苦を受け入れ…鬼哭としたり…!
 血の封印よ今こそ解き放たん―。」
「イレズ・ディス・ファリア・インベード…テイグラシアル・オヴィア・ブレイス…
 サイ・プレイゼリア・テイラミック!!!」
二つの光が現れ、激突します。
「ネプチューン・トライアングル!!!!」
「ロード・オブ・ハデス!!!!」
強烈な光と風に二人共飛ばされます。
エネルギーとエネルギーの激突が凄まじいスピードで行われています。
マルクが先に態勢と立て直し、ウィザードに対して体当たりを試みます。
「馬鹿ガっ!」
しかしウィザードに当たったと思うと、すぐそれは影となって消えてしまいました。
「チッ…まずいなァ…。敵は瞬間移動もできるのか…。」
マルクは敵の姿を見つけようとしている時はすでに、ウィザードは呪文の詠唱を始めていました。
「ブラッド・コロナ!!!」
マルクがウィザードの姿を見つけた時には、その目の前に血のような色の塊が迫っていました。
「うわあっ!?」
マルクは真紅の火球を羽でまともに受けます。
片方の羽を負傷して、そのままバランスを崩して下へと落ちてしまいました。

「何故オマエは私カラカービィを逃がしタ?」
倒れているマルクの元へ、ウィザードは降りてきます。
「君に復讐をさせたくないのサ。」
ウィザードは目の前にいる敵を不思議そうに眺めます。
「ソレハ何故だ…?」
「復讐を諦めればキット、君も分かるのサ。」
マルクは立ち上がりました。そしてまた呪文の詠唱を始めます。
ウィザードもハっとした様に詠唱を始めました。

「僕も…君と同じくカービィちゃんに負けた一人なのサ。」
翼を羽ばたかせながらマルクは言います。
「馬鹿ナ!ナラバ何故今、一緒に行動をしてイル!」
空中で指先に魔力を溜めながらウィザードも受け答えします。
「言葉で言ったって君には分からないのサ!」
三つの小さな光の弾が回りながらマルクの翼から放たれました。
「ワタシはカービィがワタシの夢全てヲ壊しタコトを、今でモ鮮明に思い出セル!」
詠唱中のウィザードの周りを、三つの光の弾はぐるぐると回りはじめました。
「ダカラワタシは、彼を倒すコトをワタシの夢と変えた!ソレデ今まで乗り越えテキタ!」

「違う!」

光の弾は結界となってウィザードの動きを完全に止めました。
「そんなことを君は夢にするのカ!?夢は、もっと違うものなのサ!」
「違うワケが無イ!ワタシは……そレダケが必要ナノだ…!カービィの屍ダケを求めているのだ!」
「そんなの嘘ダロ!君だって、分かっているはずなのサ!」
ウィザードは身動きができない中でも、必死に詠唱を続けています。
「僕は、ハッキリ言えるのサ。誰かを救うことに繋がるのが、夢ってものだっテ!」
「ソンナモノをっ!なら…ワタシの生き甲斐というものハ……。」

「ワタシの生キル理由は完全ニ否定デキルとでもイイタイノカ!」
 光の結界、ウラノス・デルタはウィザードの魔力で粉々に吹き飛んでしまいました。
魔力というよりは精神力で吹き飛んだと言ってもいいのではないでしょうか。
マルクは一瞬ひるみます。が、声の限りウィザードに叫びます。
「君の中に…善意があることヲ、いいかげん認めるのサ!」
「善意なド…悪意もワタシには分かラン!ただ、カービィを倒スだけだ!」

体力も魔力も、二人共限界を迎えていました。

『きっと、これが最後の一撃になるだろう…。』

二人共、そう感じていました。
「君に…復讐はさせたくないのサ。」
「ワタシは…カービィを倒さナケレバ…逃げるコトも許されナイノダ…。」
二人の詠唱はまた、同時に行われました。
「ブラック・サン!!!!」  「デヴィル・ブレイド!!!!」
今までで最高のエネルギーのぶつかり合いが起きました。

『君が復讐をあくまで望むなら…僕が君を倒してみせるのサ!』

『ワタシは、ワタシの信ジタことヲ、嘘トハ…思いたくナイのだ!』

――光は急速に輝きを失っていきました。
その光を失った中にあったのは、マルクの姿だけでした。
「ウィザード…。」
魔力は圧倒的にウィザードの方が上でした。
………ならば何故マルクがここにいるのでしょうか。
「ウィザード…。」
マルクはもう無いその名を呼びつづけていました。



NEXT STORY・・・双龍



★用語解説★

プルート・ホール・・・太陽魔術の一つ、冥王の力で時空のひずみを作り出す。
            そこに吸い込まれたら二度と帰って来れないブラックホール。
ネプチューン・トライアングル・・・太陽魔術の一つ、海王神の力、海水の三角形が敵を襲う。
                  海が近い場所ならば、威力は更に増す。
ロード・オブ・ハデス・・・暗黒魔法。混沌の魔王の力をその身に宿し、敵を哭弾で討つ。
              闇の力を使うため、使用者の命を少しだけ減らしてしまう。
ブラッド・コロナ・・・暗黒魔法。自らの血を燃えさかる火球と変えて敵に放つ。
ウラノス・デルタ・・・太陽魔術の一つ、天王の力、三つの光球で敵を捕縛する。
            結界は結構もろかったりする。
ブラック・サン・・・太陽魔術の究極魔法。太陽の爆発的なエナジーを凝縮して魔力とする。
           決して『ブラックさん』と言ってはいけない。
デヴィル・ブレイド・・・暗黒魔法。黒い風の刃が襲い掛かる。やけに強い。

★第十八幕のあとがきっ★
信じることへの不安と願い。夢っていうのは自分が決めることだけど、自分が決めること故に、
正しいことじゃなかったりもする。人への憎悪を夢へと変えてしまったウィザードは、
そのことで自分の中で葛藤を起こしてしまうのだ。自分は偉い人になる!って夢を持っている人。
その夢の先に何があるんだろうか、自分のことで夢を掲示してないだろうか。考えて欲しいのだ。





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