第3話 裏切り



「ねぇマルク。」
 カービィは、マルクに突然尋ねます。
 今居る所はメックアイ。機械の星です。
 ノヴァのパワーもあと1つ、この星にあるものだけになりました。
「ここってなんか不気味な星だよね。何て言うか………だぁれもいないんだもの。みーんなどこかに行っちゃったみたいでさ。」
「……んー…、まあネ。生物の気配が、全くしないのサ。
邪念のおいしそうな匂いもしないしネ♪」
(……マルクって、時々変な表現使うなぁ。)
「でも……油断しちゃダメだヨ♪ 防衛システムはしっかり生きてるんだから♪」
「…はぁ?」
 いきなり、カービィに向かって炎の球が飛んできました。
「っきゃー!?」
 直撃です。
 マルクは楽々かわして、上の方へ飛び移りました。
 緑色の目が闇の中で爛々と輝いています。鉄光りする金のからだが姿を表しました。
 ヘビーロブスターです。
「カービィ、奴はヘビーロブスターというのサ。体当たりと炎の球に注意すれば、簡単に倒せるのサ!!」
 カービィは聞いちゃいません。
 ヘビーロブスターから炎の球が乱射されているからです。
「マっマルクもっ見ってっいっなっいっ…でぇ!!て、手伝ってぇっ!!よ!?」
 また直撃です。
(………ザコいなぁ………)
 星の戦士のわりに幼稚すぎる。相手は自動操縦で単純に相手を倒すことしかプログラムされていない古代兵器。しかも長いことほったらかしだからガタがきている。と、なると燃料漏れが生じるはず……。
 マルクがそんなことを考えている時、ヘビーロブスターはペイントスライムを垂らしました。すかさず、カービィに向かって叫びます。
「カービィ!! あのスライムを吸い込むんだ!!」
「〜〜〜!!」
 カービィは訳もかまわず吸い込みを始めました。
 炎の球といっしょに、ペイントスライムが吸い込まれていきます。
 虹色の光がカービィを包み込み、真っ黒の帽子と虹色のペンキが入ったバケツが現れました。
「ペイント!!!」
 カービィが鋭く叫びます。目は別人のようです。
(これがペイントカービィか……)
 カービィがかざした手から大きな筆が現れました。
「ペイント塗ったくりー!!!」
 インクの波がヘビーロブスターにかかります。
 インクは機械の体に染み渡り、ヘビーロブスターを停止させました。
 ペイントの能力は消え、カービィはへたへたと座り込んでしまいました。
「……ふ〜
…あれ?」
 向こうで何かが輝いています。
 ノヴァのパワーです。
「最後のパワーだ!!」
 カービィはパワーに手をのばします。
 どん!!
「うわぁ!!」
 カービィは何かに押されて吹き飛ばされました。
「いたた………え?」
 マルクがパワーを持ち、勝ち誇った笑みを浮かべています。
 よく見ると、フロリア、アクアリス、スカイハイ、ホットビート、ケビオス、ハーフムーンで取ったパワーも、マルクの周りに浮かんでいました。
「あっあれ!? パワーが1つも無い!!
……まさか…!!!」
 マルクは、細い笑みを浮かべました。
「気づくのおっそいんじゃなーい?カービィちゃん♪」
「…うそ……」
「あははっ♪その顔、その表情!! 裏切りってどうしてこうも胸がときめくんだろう♪
何百年たっても変わらないなぁ。信じていたものが一気に崩れ落ちるときのその顔は!!!」
 カービィは声も出ません。
「もう君には用はないよ。邪魔だしぃ、そうだなぁ…」
 マルクはカービィを睨みつけました。もうその目はマルクじゃありません。
「おとなしく消えていて♪」