悪い夢を見ていた。 そうだ。 これは みんな、悪い夢。 本当のことなどひとつも無い。 そうでなかったら どうして 此の手が動かないのか どうして 此の目が見えないのか どうして お前がそこで死んでいるのか わからないじゃないか。 だから これは 夢だ。 極めて醜悪で 残酷な 夢だ。 悪い夢 わるいゆめ ハハ 怖くなくなった そうだ、夢だ 真実じゃない 何一つとして ハ アハハハハ ハハハハハハハ ああ 此処は 暗いな お前は何処だ? 私は わたしはここにいるぞ あ くら い は ぁ あ ああああ しぬ 死? わたし が? ゆ めなのに? しぬの か ? あああ あ おまえ おまえはどこだ わたしは わたしは ない なにもない くらい し しぬのか おまえもいないのに おまえも あ くらい さむい いた く しい おまえはおまえはおまえはどこだ わたしは ここにいるのに わた あ ああ あ 生きたいのか? 神様を忘れた日 第1話 悪い夢 私は。 私は、無意識に頷いていた。幼い子供のように、こくりと。 私には、それが何かわからなかった。 それがあまりにも雄大で、巨悪で……そして、自分のあまりの深くに語りかけたからかもしれない。 それは、云う。 ―――夢を生きろと。 ああ。その通りだ。 私は従った。導かれた。私はそれの一部になり、私はそれのなかで眠った。 ナイトメア。 悪夢のそのもの。 なんでもいい。 夢は、夢だ。 正しさも真実も、幻の前では常に無力だ。 なぜなら、全ての秩序が虚空に過ぎぬから。 魔獣シミラ。 それが、私に付けられた名称。 私は魔獣になった。 |