T 邪魂の囁き


 ――急に、視界が暗くなった。宙が回るように、意識が反転する――。
「……? メタナイト…?
!! メタナイト!!」
 フームの声でさえ、どこか遠くに聞こえた。周りは完全に、闇に満たされる。
 ……何故か覚えある、闇。





 ―――メタナイト殿は、お強い。
 従うべき相手である陛下にも、自分の意見に反する時は、少なからず反発される。
 ……その点僕は、弱い。

 ハァ、と、ため息をつく。手に掴んだ短剣に映る情けない自分の顔を、とても嫌そうに見つめながら。
 ワドルドゥは、デデデに頼まれたおつかいのため、ウィスピーウッズの森にいた。
 僕は、どうして陛下に逆らえないのだろう…?
 陛下のお考えは、僕には分からない。陛下は、大人の力を持った子供なのだ。
 そこには必ず間違えがあった。カービィを殺す必要がどこにあるのだろう?ププビレッジ(自分の領地)を襲う必要が、どこにあるというのだろう?
 ……陛下がどうにしろ、僕が弱いせいで、僕は陛下に逆らえない。

 惨めだ。と、ドゥは思った。メタナイトの強さがまぶしすぎて、消え入りそうだ。



 ……まるで魔獣みたいだな。



 いままでデデデがダウンロードした魔獣は、文句の一つも言わず従って、消えた。
 僕もいつかは、ああなるのだろうか。
 苦笑が漏れる。なんだろう?それが当たり前のことみたいだ。



 
僕はもう死んでいるのだから。



 ……え?
 自分の声。自分の知らない意志。
 ……何?



 闇。
 知らないはずの闇。知っているはずの闇。
 闇が広がる。

 ――全てはナイトメアに行き着く――。